カートを見る マイページへログイン ご利用案内 お問い合わせ お客様の声 サイトマップ
RSS
 

おこわの思い出

それはお正月用のお餅搗きから始まります。

今でこそお正月飾りのお餅はお店で買えますが、

私の幼い頃は餅米を確保していて、それを年の瀬になると

周辺の農家の男衆が農作業を早く済ませ、副業として

家々の餅搗きをして回るのです。

農家では家族総出で餅搗きをされるのですが、

町屋では男衆もなく年末は商いの書き入れ時で、

「猫よりまし」と言って家の手伝いをさせられたものです。

暮の20日頃になると帳面を持って、

「今年はどげんしなさるの?」と注文を取りに見えられます。

「一升ひと重ね一組、五合三重ね、小餅100ヶ、かき餅用2つ」

と母が頼んでいました。

さぁ、その日はクリスマスに次いで大きな楽しみのひとつの

餅搗き!と言うより、おこわを食べる事のほうが楽しみでした。

9時過ぎになるともう眠いのなんの、目をこすりこすり。

お布団から首だけ出して外を眺めていると威勢良く、

「米をもらいに来ましたバイ!」と言って今年注文の洗い米を

取りに来られます。我が家より前の家が終わったら、

おくどさん蒸籠をリヤカーに載せて、家の前に道具が据わります。

天下の王道で行われるんですよ。

米を蒸し、蒸し上がったおこわは蒸籠から石臼にひっくり

返されます。それを待ち構えて母が「すみませぇーん」と言い、

丼一杯、遠慮しながらそのおこわをいただきます。

そしてパタパタと母は神様と仏様にお供え。

額は畳に擦りつけるように何か言いながら丁寧に頭を下げています。

立ち上がったらと思うと、私たち幼い子供の口に見事に入れてくれるのです。

それが餅搗きの唯一の楽しみ。熱々のおこわは忘れられません。

今思えば、

「おかげさまで今年もお餅を搗かせてもらいました」とは、

「おかげさまで年を越させてもらいます」と言うお礼の言葉

ではなかったかと思います。

見事な手捌きでお鏡餅が整えられていきます。

おこわは食べたし、もう眠いのなんの。

ようやく小餅を12ヶ丸めたら、白粉吹いた手もろくに洗わずに、

バターンキューでおやすみなさい。

このおこわが忘れられなくて、笹おこわに至ったしだいです。

そうそう、お餅搗きの日は年取りと言いまして、

必ず塩鰯の焼物を食べていました。

庶民のささやかな楽しみで鰯の尾頭付きです。

鯛を食べたつもりで鰯が晩ごはんのおかずになります。

どんな小さな子供でも年取り鰯が据えられるのです。

ページトップへ